血と雨にワイシャツ濡れている無援ひとりへの愛うつくしくする
岸上大作
『意思表示』~「黙禱」
60年安保闘争の際、時代に抗い、闘い、飲み込まれて自死した岸上大作の代表歌。三句切れである。
闘争の際流れた血と雨にワイシャツが濡れている。国家権力に対する無援、そして共同幻想のなかにあっても感じる孤独・・・。そのたった一人で背負う闘いの中で、あなたひとりへの愛を、うつくしく昇華させている。
岸上大作氏の歌集『意思表示』といえば、苦い思い出がある。高校生のころ、武蔵小山のアーケードにあった書店で、この歌集を購入した。その後、大学に入学、そして卒業して住まいを転々としたが、短歌関係の本だけは売ったり失くしたりしないでずっと持っていた。
ところが、なんとしたことだろう、この『意思表示』だけを紛失してしまったのである。岸上氏の名歌集、しかも初版本である。今ではどうしたって手に入らない。歯噛みしたい気持ちだ。
しかし、高校生時代にこの歌集を買ったこと自体が、前述の学習塾の先生の薫陶の賜物とも言える。有難い。(綾)
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読者1 (月曜日, 03 11月 2014 18:11)
『意思表示』初版、何とももったいないことです・・・。
小田原明子(石井綾乃) (火曜日, 04 11月 2014 08:54)
読者1さん、コメントありがとうございます。本は大切ですね!