お茶のひととき 2

 むきあえば半ば翳れる汝が頬よ 告げざりしわがかなしみの蝕

                               永田和宏

                             『メビウスの地平』~「聖痕」より

 

蝕とは天体が他の天体にさえぎられて見えなくなること。蝕む(むしばむ)の意もあり。

あなたに対する想いに、他の存在がいつしか入り込んだことを告げはしなかったが、わたしのかなしみという「蝕」がいつしか兆し、向き合ったあなたの頬を月蝕のように翳らせている・・・。

 

私の短歌との出会いは、永田和宏氏の短歌を、当時通っていた学習塾の先生が朗詠してくださったことに依る。先生の朗詠はすばらしい迫力で、中学生だったころの国語の授業は、気鋭の歌人の現代短歌を先生が朗詠してくださる、という斬新なものだった。少女だった私は永田和宏氏の短歌のみずみずしさに魅了され、それから長い長い短歌との取組みが始まった。脱線したこともあったが。先生の「授業」のおかげで、今でも永田氏をはじめ、いくつもの短歌を諳んじることができる。先生にいただいた珠のような財産だ。(綾)